リシケーシの風 ー最初はキールタン!(vol.8)ー
最初はキールタン!(vol.8)
◆グルデーヴ・クティールのキールタン
さあ、最初のアーシュラム行事は、夕べのサット・サンガ。
グルデーヴ・クティールでのキールタンです。
キールタンが終わると、祈りを胸に、全員でクティールの外へ出てガートを下り、そのままガンガーの岸辺でアーラティが始まります。
そしてアーラティが終わると、今度は一挙に、アーシュラムの最高地点――ダイニングホールへと階段を駆け上り、夕食です。
夕食後はいったん部屋に戻りますが、ほんのわずかな時間。歯を磨き、身だしなみを整え、持ち物を確認したら、再び部屋を出て、今日最後の行事――ナイト・サット・サンガへ向かいます。
わたしは過去の経験から、「ここから今日の終わりまでは、一挙なのよね〜」と、すでに頭の中で流れが見えていました。
メンバーはどうだろう……。さきほど、これから続く時間の流れや心づもり、持ち物を一通り伝えたつもりだけれど……
そんなことを思いながら、クティールへと足を運びます。
このときは、一応、先頭でクティールに入らせていただきました。
一度体験してしまえば、飲み込みの早い皆さんは、明日からはきっと大丈夫。
初回だけです。礼節がどうこうというよりも、このクティールに満ちている、他とは少し違う神聖な雰囲気を、最初の瞬間に感じてもらえたらと思ったのです。
あゝ……懐かしい空気の始まりです。
部屋の奥、前方右側。川﨑あき子さんはすでに着席され、こちらを見ることもなく、ハルモニウムに手を置いていました。
そこは、あき子さんの席であり、あき子さんのお役目の場所。キールタンは、もう始まっていました。
わたしは少し急いで来たせいか、胸いっぱいに息を吸い、静かに吐きながら歩みを整えます。
入口で平伏して一礼。
クティールに、グルデーヴに、ご挨拶です。
以前は、ハムサナンダ・ジー・スヴァーミージーが、毎日ここでキールタンを導いていました。
ハムサナンダ・ジーがご高齢になり、ご病気をされてからは、現在はスヴァーミー・グルプリヤーナンダ・ジーがその役目を引き継がれています。
引き継がれたいまも、この夕方のサット・サンガは変わることなく、365日、休みなど一日もなく、毎日ここで続けられています。
人が替わっても、かたちが少し変わっても、この流れだけは途切れない──
そのことに、アーシュラムという場の力を感じます。
以前、ハムサナンダ・ジーと共に手伝っていた、白い衣をまとった若いスヴァーミージーの姿はいまは見かけません。
きっとハムサナンダ・ジーをグルと仰ぎ、そのおそばで、また別のかたちで日々を捧げておられるのでしょう。
今夜は、オレンジ色のクルタを着た男性が、力強い音でハルモニウムを弾き、元気な声でジャヤ・ガネーシャ・キールタンを始めます。
その隣には、あき子さん。さらに若い女性が二人。
一人はキールタンの冊子を静かに配り、終わればすっと片づけを手伝っています。
誰が主役というわけでもなく、それぞれが自然にサンガを支えている――
そんな在り方が、この場にはあります。
穏やかで、やわらかく、あたたかい。夕暮れの空の色が変わっていくように、わたしたちの心も、いつのまにか自由に、正直にほどけていきます。
わたしがキールタンを好きなのは、きっとこの場所、この雰囲気、この積み重なった時間と切り離せないからなのでしょう。
朝に、夕に。
この部屋には、光と風がとても美しく流れ込みます。
ここで暮らしたシヴァーナンダ師。その後、この師を慕い、生涯を奉仕に捧げたスヴァーミーたち。
彼らはここで、同じ景色を見、同じキールタンを歌い、日々のサーダナとして祈りを継いできました。
そう思うと胸がいっぱいになり、できるだけ長く、この部屋に居たいという気持ちになります。
グルデーヴ・シヴァーナンダは、キールタンをこよなく愛されました。キールタンなしに始まる催しは、何一つなかったといいます。
病のときも、死の間際も、誕生も、結婚も、
礎石を置くときも、建物を壊すときも――
いつでも神の名が歌われました。(『シヴァーナンダ・ヨーガ』)
当時、歌い、踊るスヴァーミーなどほとんどいなかった時代です。シヴァーナンダ師は、たちまちインド中に知られる存在となります。
「キールタンによって、インドは変わるべきである」
そう語る一方で、
「キールタンは単なる音楽会ではない。修行の一つである」
とも、はっきりと戒められました。
この場所は、グルデーヴ・クティール――
スヴァーミー・シヴァーナンダが実際に暮らしていた空間です。
大きな窓の向こうには、悠々と流れるガンガー。正面の壁には、等身大のシヴァーナンダ師の写真。その隣には、使われていた椅子。どの写真の前にも、いつも生花が添えられています。
朝来ても、夕方来ても、花はしおれていません。訪れる誰かが、そっと持って来て、そっと置いていくのです。
川﨑あき子さんもまたその一人です。今もきっと続けておられるのでしょう。
早朝、静かに訪れ、写真の前で一息、深く礼拝し、花を供えられるその姿を、わたしはこれまでもう何度も目にしてきました。
そうしたくなる空気が、今もなお残っている――
それが、このグルデーヴ・クティールです。
この日のキールタンは、グルへ捧げられるようです。グルの歌が続きました。今日は木曜でグルの日のようです。
これはシヴァーナンダ・アーシュラムに限ったことですが、今日のキールタナ を捧げる対象があるのです。
『BHAJAM-KIRTA IN GURDEV KUTIR』 とタイトルされているキールタン冊子の目次は、曜日ごとに分けてあります。
キールタンは神や聖者の名を唱えるために、出てくる名を分類し、曜日ごとにしたようです。
あき子さんがグルデヴ・シヴァーナンダとガンガーのキールタンを歌われました。
あとは知らない曲目でしたが、(…あゝ 幸せ)。
胸はグル(師)の姿でいっぱいで、それも笑ってにっこりと、いっしょに歌っています。
今日は、朝からいったい何があったかと言えば、三日、いえ一週間分くらいのことがあったので、パンクどころか時間の境を失ったぐるぐる🌀です。それがす〜っと流れました🙏。
「オーム トリャンバカム ヤジャマへ〜……」。最後は、マハー・ムリティユンジャヤ・マントラが10回かな、繰り返されます。
そう、わたくしが開くヨーガ教室の名前も入っていますし、よい機会なので紹介します。
大いなる解放への真言
マハー・ムリティユンジャヤ・マントラ
महामृत्युंजयमन्त्रः
mahā-mṛtyuñjaya-mantraḥ
・ mahā 大いなる, mṛtyu 死, jaya 勝利・克服, mantraḥ 真言
三つ目の主(シヴァ)を、わたしたちは礼拝いたします。
芳香に満ち、生命を養い、成長を促すお方を。
熟した瓜が蔓から自然に離れるように、
死の束縛から、どうかわたしを解き放ち、
不死へと導いてください。
ॐ त्र्यम्बकं यजामहे
सुगन्धिं पुष्टिवर्धनम् ।
उर्वारुकमिव बन्धनान्
मृत्योर्मुक्षीय मामृतात् ॥
oṃ tryambakaṃ yajāmahe
オーム トリャンバカン ヤジャーマヘー
sugandhiṃ puṣṭi-vardhanam |
スガンディン プシュティ・ヴァルダナム
urvārukam iva bandhanān
ウルヴァールカミヴァ バンダナーン
mṛtyor mukṣīya māmṛtāt ||
ムリトョール ムクシーヤ マームリタート
・ oṃ聖音, tryambakaṃ三つ目の主を(tri三 + ambaka目/対格), yajāmahe礼拝します・供養します(√yaj・1複・中動)
・ sugandhim芳香ある者を(su善く + gandha香り/対格), puṣṭi-vardhanam滋養を増大させる者を(puṣṭi成長・滋養 + vardhana増進/対格)
・ urvārukam瓜・熟した果実を(比喩), iva〜のように, bandhanāt束縛から(奪格)
・ mṛtyoḥ死から(奪格), mukṣīya解放されたい(√muc・希求法), mā〜ではなく, amṛtāt不死から(離すことなく/奪格)
『japa yoga』より
ガンガーに降り、ガート(ガンガーに降りていく石段の下の広くなっている踊り場のこと)でのアーラティです。いつも思うのですが、ガンガーを前に、祈りを唱え、焚かれる日を見つめて、その火がガンガーに舞うのを見ますと、涙が溢れてくるような、言葉にならない胸に込み上がってくるものを感じるのです。もし、わたしがインド、このリシケーシに暮らすことになったら毎日こんなことではハートはいったいどんなことになるのでしょうか。ガートは、ちょっと霊性にガートとは、祈りと日常がそのままガンガー・マーへ溶け込んでいく“境目のない場所”ともいえるでしょうから、ついつい、ハートは子供になっちゃうのでしょう(笑)。
さあ、今度はおセンチになっていられません。
階段を一挙駆け上がります。
もう、この毎日が、わたしは「たまらん」。
たまらないほど、愉快というか、面白いというか――
これが、リシケーシのアーシュラム生活。間髪のないプログラムなのです。
「ハレ・ラーマ ハレ・ラーマ……」
マハー・マントラが響く、初日の夕食が始まります。
ここから先は、また次回のお楽しみに。
つづく〜
(^^)/~~~
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